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限界集落の真実 [修論へむけて]


限界集落の真実: 過疎の村は消えるか? (ちくま新書)

限界集落の真実: 過疎の村は消えるか? (ちくま新書)

  • 作者: 山下 祐介
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/01/05
  • メディア: 新書


去年、石川さんが参考文献として教えてくれた本。とても興味深くて二日ほどでどりゃっと呼んだ。
以下まとめ

・「限界集落論」は1980年代末に社会学者の大野晃氏によって提唱されたものである。限界集落論が提唱された当時はメディア・政府ともに大きな反応はなかったが、2000年代になって突如注目が集まった。

・2007年からメディアで大きく取り上げられた限界集落論では「7年間で191の集落が消滅した」「消滅しつつある限界集落を救え」といった報道がなされたが、実際はメディアが形成した限界集落のイメージは現実とは大きくかけ離れていたという。(その内容はダムや道路による移転、自然災害等が含まれており、著者の調査では高齢化による集落消滅は全国の中でもまだ一つも確認できなかった)
 
・従来の限界集落論は、65歳以上の高齢者の比率が高くなればなるほど集落が限界に近づくという論理であったが、実際には「高齢化率の上昇→集落の限界→消滅」という図式は観察されたことはなかった。しかし、この図式が、その簡潔さによってあたかも法則であるかのように過剰に伝えられた。

・とはいえ限界集落の問題は虚構だったかといえばそうではなく、これから生じうる可能性のある「リスク問題」として切実に考えなければならない問題。

・著者は、限界集落の問題の焦点は高齢化率ではなく少子化(率ではなく数)にあり、世代間の地域継承の問題として捉える必要があると説く。(高齢化率を過度に着目するのは本質的でない)

・過疎地域をめぐる問題は、日本社会の戦前と戦後の世代間の継承の問題であり、その継承は国土利用、食料供給、環境保全とも関連するため、都市や首都圏も含めた「周辺発の日本社会論」として捉えなおす必要がある。

というのが前半のざっくりした要旨になるのだが、「世代間の住み分け」として家族、集落を捉える視点が非常に目から鱗だった。

限界集落と呼ばれている地域では、大正末から昭和一桁生まれ世代が多い。その世代は昔ながらの生活を親から受け継いで同じ場所で生活してきたが、その子どもにあたる戦後直後生まれの「団塊世代」が高度経済成長とともに都市部に移動する。さらにその後の低成長期生まれははじめから都市部で生活する。
この世代間の住み分けにより、加齢が進むことによって超高齢化地域が出現するが、一方でこうした世代間の住み分けは、戦後からの人口増大に対して集落を適正規模に保ち、現代社会を生き抜く上で合理的なものであったといえる。①家に残って家・むらを守り続ける人、②むらからは出て行くが近くにいて支える人、③むらから遠く離れて迷惑をかけず生きる人という三種類の生き方を各自がそれぞれに引き受けることで、世代間の住み分けによる「広域にひろがる家族」が家の危機、むらの危機を乗り越えてきた。

今後はふるさとに戻る人の帰還をいかに実現するか、また次の世代である低成長期生まれが現在の地方や農村漁村でうまく暮らせる方法がないかその方法を探るということが課題になる。

集落再生の主体をいかにしてむらの人々とするか、そのための具体的な方策として「集落点検」などの方法も語られていたが、ここでは割愛。

限界集落の問題は、むしろバブル期の行政中心のハード整備や行政区画の合併によって。自治体の力が失われ、集落の主体が喪失されたことにあるというのは納得。

集落再生の主体が集落自身となり、第二世代、第三世代がUターンやIターンで戻るとき、
具体的な住まい、つまりフィジカルな家という建築の問題がどのように関係できるかということが建築側からできる研究や実践になるのだろう。このへんを探っていきたい。具体的な対象を見つけたい。

コメント(1) 

コメント 1

てつ

頭が悪くてその場では口から出てこなかったのですが、あれから少し考えました、
低成長期人(自分も含め?)は地元が好きだけど、帰っても仕事がないんじゃないか、都会で勉強してきたことが地元に戻ることで都会と切り離され、最先端のことは出来ないんじゃないか、という躊躇を持ちながら都会で就職して、もどら(れ)ないということが沢山おきている気がしています

集落自身の建築(フィジカル)を考えるのと同時に、地元と繋がっている都会の拠点というのもどうだろうか、と今ちょっと考え始めました。
興味深いお話、ありがとうございました。^^

by てつ (2013-09-21 01:20) 

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