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7 東方を見てみると、8 るつぼの中の西欧美術 [美術の物語]

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7 東方を見てみると
宗教の物語を描くとき、ときに人物像を作ることが禁止されるとき、美術はどのように振るまってきたのか。今回はキリスト教以外の2大宗教、イスラム教と仏教について。

イスラム教と図像の関係を端的に述べたのは以下の一文だ。
8世紀に破竹の勢いで広がった中東の宗教――ペルシャ、メソポタミア、エジプト、北アフリカ、スペインを制服したイスラム教――は、図像についてはキリストよりもはるかに厳格だった。そもそも図像の制作が禁じられていたのだ。しかし、美術というものはそう簡単に抑えられるものではない。事実、人物像を作ることが許されなかった東方の職人たちは、模様や図形に想像力の捌口を見出した。アラベスクの名で知られる精緻極まるレース模様は、こうして生まれたのである。(ポケット版、111p)

図像が作れなかったから模様が発達した、ってホントなのだろうか。とはいえゴンブリッチによれば、イスラム圏の装飾模様のデザインや配色の由来を辿っていくと、最終的には予言者ムハンマドに行き着くらしいのだ。

アンダルシアの都市と田園

アンダルシアの都市と田園

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 鹿島出版会
  • 発売日: 2013/02/13
  • メディア: 単行本
この前読んだ『アンダルシアの都市と田園』では、装飾ではなく、グラナダをはじめとしたアンダルシア都市のパティオ(中庭)を囲んだ住宅と都市の関係が詳細に語られていてとても面白かったのだが、こういう住居形式にもまた、宗教的な理由があって出来たのだろうか。

いっぽう中国をはじめとして仏教圏において、しばしば美術は「瞑想のための手段」として制作されたという。「自然から数少ないモティーフをとってきて、それだけを描く態度」。そんなに瞑想ばかりしていたのだろうか。

8 るつぼの中の西欧美術
313年にキリスト教がローマ帝国の正教に定められてからの300年を初期キリスト教時代とよぶ。この時間には聖書の内容を伝えるのに美術が用いられてきた。建築ではサン・ヴィターレ聖堂(543)やサンタポリナーレ聖堂(549。ともにラヴェンナ。両方見たい)といった初期バシリカ構造の傑作が生まれた。
で、476年に西ローマ帝国が崩壊してからの500年間。だいたい500-1000年くらいの間を一般に「暗黒時代」というそうだ。なぜ「暗黒」かというと、①民族移動と戦争の時代だった、②資料が残っていない、③数多くの様式がせめぎあっていた、などの特徴があるからだ。
このあとイングランドやゲルマン系民族の美術が紹介されるのだが、ここではじめて「中央と周縁」という構図が初めて生まれたのではないだろうか。フランク帝国(ドイツ)のカール大帝がサン・ヴィターレ聖堂をマネしてアーヘンの宮廷礼拝堂(805)を作ったように、(あくまで文化的な)先進国と後進国のような意識はできていたのではないか。

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聖マタイ(アーヘン、830頃)source image かっこいい。

というわけでこの時代の美術の特徴を一括りにすることは、いくらゴンブリッチ先生とはいえ難しそうだけれど、ケルトやノルマン、フランク帝国といった「当時の後進国」の美術の特徴は、表現においても想像力を最大に駆使している、というところだろうか。ちょっと長くなるけど、上のマタイの絵に対するゴンブリッチのテキストを引用してみよう。
(中略)こういう絵を見ると、新しい中世様式が出現したのだと納得できる。いまや、古代オリエント美術でも古代美術でもなされなかったことが、可能になったのだ。エジプト人はおもに「知っている」ことを描いた。ギリシャ人は「見えている」ものを描いた。だが、中世の画家は「感じている」ことをも表現できるようになったのである。 「感じている」ことの表現を目指していたという点を押さえておかないと、中世の作品を正当に評価することはできない。中世の芸術家たちは、実物そっくりに見せかけたり、美しいものを作りたがっていたわけではない――聖なる物語の内容やメッセージを、信仰の仲間に伝えようとしていたのだ。(ポケット版、124p)
審美性みたいなものが制作における評価軸に入ったり入らなかたりするのは面白い。ギリシャ美術は明らかに審美性があったし、エジプトはその中間くらい。もちろん「美しさを目指すこと」と「物語を伝えること」は相反しないが、この時代の「美しさ」の基準は、ギリシャ的なプロポーションの美学とか、「観察したものをいかに定着させるか」というところにあったんだろう、という気がする。
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