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近代建築史アゲイン(2) [建築の歴史]

マニエリスムからバロックへ

ルネサンス(旧世界)→(飽きた・・)マニエリスム→(新しいパラダイム)→バロック(新世界)というパラダイムの転換を見る。
ギリシャ→ローマ→ロマネスク→ゴシック→ルネサンス→今ココ
現代もある意味マニエリスムで、建築と社会が乖離している


1 マニエリスム(=アンチルネッサンス)


ルネッサンスが徹底的に飽きられた特殊な時期。マンネリの語源でもある
極端な遠近法と明暗のコントラスト、不自然な人体プロポーション、複雑で謎めいた主題表現、など、共通して奇怪ともいえる雰囲気をもっている。
マニエリスムは、一言でいうと。ミステリアス。世界ふしぎ発見。
またはボーイズ・ラブ的なエロスがある気がする。

パラツィオ・デル・テ
設計:画家・ジュリオ・ロマーノ(そのころのアーティストはなんでもやった)
パラツィオ・デル・デ全体像.jpg
ずれたアーチ.jpg
中庭への展望.jpg
特徴1「形式の崩壊」
ルネサンスはお手本をギリシャ・ローマに求めた「引用的な」想像であった。
引用であるから、伝言ゲームみたいに、誤差(変形)が生じる。
しかし、マニエリスム期には、その変形を楽しむようになる。
オーダーからの逸脱

・愛人との愛の巣
・三角形の切り妻型の屋根はギリシャ風
・アーチの根元が4本に分かれている
・扉がふたつあるけど、開くのは片方だけ笑
・アーチのキーストーンが梁を貫いている
・絵的なお遊びが立体になっている

ここまで読むとマニエリスムは、単なる悪ふざけのパニック映画のように見えるが、ルネサンスの世界観に対して「それは違うんじゃないか」と問い直し反抗した時代でもあった。実際に「時間というもの」が建築表現に初めて取り入れられるようになり、のちにバロックというパラダイムの転換が起こり、新しい世界になった。
今でいうとマニエリスムは「原発デモ」みたいな感じなのだろうか。パラダイムが変わればいいのだけど。例えば60年代の学生紛争も、ただ反抗したかっただけではないだろう。例えば「『知』というのはもっと広がってるのではないか?」とアカデミズムの権威としての大学へ反抗した。(ちょっと脱線)

特徴2「時間の介入」
パラツィオ・デル・テで出現した建築における時間の表現

・秘園 ポンペイの廃墟のような、時間の流れを表現したシークレット・ガーデン♡
・グロッタ(ほら穴)(グロテスクの語源)はローマ時代へのタイムマシーン
パラツィオデルデのグロッタが、建築における初めての時間表現。建築でないものが、建築にはりついた感じ。「薄暗い小道を抜け、角を曲がると・・」みたいな小説的なシークエンス。

「形式=いつでもどこでもその形」というモデル、つまり時間が含まれない。建築にどうやって「時間」を取り入れるか、という問題はこの時期から考えられた。


2 バロック スペイン語で「沈んだ真珠」


クアトロフォンターネは宝石のような建築。宝物なんだけど、それらにディストーションがかかった運動のある世界。マニエリスムはルネッサンスの悪ふざけだけど、バロックで遂にルネッサンスと対比される世界が生まれる。一番大事なのは「運動」時間を動かす、そういうものが目指された。端的にいえば、楕円。楕円=運動性の象徴 なぜ楕円か?そういえば車のエンジンも楕円

「サン・カルロ・アッレ・クァトロ(4つの)・フォンターネ(泉)」/フランチェスコ・ボッロミー二
Dome San Carlo alle Quattro Fontane 2006.jpeg
San Carlo alle Quattro Fontane.jpeg

スピードのあるペリメントの曲率。図像的に統合性のある、構築された世界。
遠近法やトロンプユを用いながらも、それらは小さい空間を生かすためとして上手く利用している。
F1みたいな世界。スィーっ!中に入ると、自分が魚になったような感じになる(らしい)




3 ケプラー・宇宙・都市

問:動きのある楕円のような歪んだ建築が、なぜ説得力をもったか。

「建築は、基本的に時代に寄り添うものであるから、社会にその背景がある」

当時、「惑星は楕円軌道を回る」というケプラーの第三法則が明らかになった。
太陽の位置は楕円の中心ではなく焦点のひとつである。中心はひとつでない。オースマンのパリの都市計画は、庭園の中心をいくつも作る。「それを楕円でつなぐことによって」都市が意味をなす。多中心によるネットワークが世界を描いた。その結果「都市」とその周りの「郊外」という都市構造が生まれたり、植民地支配(=我々が領地を広げても、パリと領地との関係性が1つの世界だ、という論理)も、楕円すなわち衛星としての概念が支えてしまう。

来週はネオ・ゴシック
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