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5 世界の征服者たち、6 歴史の分かれ道 [美術の物語]



ローマのアーチや弱い技術については西洋建築史「砂糖菓子の脅威」でもやったけれど、それにしてもパンテオンすごい。パンテオン神殿は紀元120-124年の建設、万の神の神殿という意味であり、ローマ建築の最高傑作だ。古代神殿は破壊され廃墟になるものが多いが、パンテオンは313年にキリスト教が公認されてからも、教会に転用されることで生き延びた。夏ぜったい見に行く

このへんから政治的な国家レイヤーと宗教レイヤーがごっちゃになってくる。313年からの3世紀くらいを美術史や建築史では初期キリスト教時代と呼ぶ(わたしはキリスト教についてはぜんぜん知らない)が、ゴンブリッチは、キリスト教の興隆の目の当たりにし、人々がそれを受け入れることになったこの時代を「古代世界の終焉」と結んでいる。

図のカタコンベの壁画に対してのゴンブリッチの解釈はこうだ。
彼らは、絵筆をさっと2、3回動かすだけで、人間の姿を浮かび上がらせることができた。けれど、彼らは、そういう効果や技巧にあまり関心がなかったようにも感じられる。絵はもはや、たんに美しい存在ではない。むしろ絵のおもな目的は、神の慈悲と力の大きさを信者に思い出させることにあった。(ポケット版, 98P)

「死者のための美術(エジプト)」→人「間のための美術(ギリシャ)」→「宗教のための美術(初期キリスト教時代)」という風に(自分なりに)単純化するのは良くない気もするが、ともかくゴンブリッチは、たとえばギリシャ美術のラオコーン像と対比させながら「忠実な模倣という理想から、単純明瞭な観念の表現へと秤が傾きはじめたのだ(99p)」と、ギリシャ美術の洗練と調和(観察による、ありのままの自然な形と短縮法)が変化していることを指摘する。
ストーリーを伝えるために余計な細かい描写を省略するようなことは今もよくあることだし、伝えることから表現を考えるのは「広告」的な考え方になっているようでもある。

キリスト教時代の最大の問題である図像をOKとするか否か問題はここでは触れないけど、このへんは面白そうではある。

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